この恋、味見してもいいですか? どこで読める?シーモアやAmazon Kindleは?

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作品紹介(ネタバレあり)

あらすじ

街の喧騒から少し離れた場所に佇むフレンチレストラン
「Le Rouret(ル・ルレ)」。
そこで見習い料理人として働く梨井俊介(りい・しゅんすけ)は、今日も元気に皿洗い!
だが、レストラン内にはどんよりとした空気が漂っている。
実はル・ルレは深刻な経営難に陥っており、廃業の噂がまことしやかに囁かれていたのだ。
そんなある日、本社から新しいマネージャーがやってくる。
現れたのは、なんとりいの“推し”であるソムリエ、日野裕貴(ひの・ひろたか)だった。
思いがけない出会いに喜ぶのも束の間、彼は一癖も二癖もある人物で――。

ル・ルレを存続させるための条件は、ただひとつ。
“クリスマスを満席にすること”

ソムリエ×駆け出し料理人。

作者

近藤伍

登場人物

梨井俊介

梨井俊介はル・ルレで働く22歳の見習い料理人で、周囲からは「りい」と呼ばれています。明るく元気な性格が取り柄ですが、主な仕事はまだ皿洗いや掃除といった下働きです。

いつか自分の料理を推しのソムリエに食べてもらうことを夢見ており、動画配信者としての日野に憧れていたものの、本人の毒舌ぶりに困惑します。

店を再建しようとする日野の情熱を知って次第に尊敬の念を深めていきます。料理人としてのセンスは日野からも高く評価されており、豊かな可能性を秘めた存在です。

日野裕貴

日野裕貴は本社の第1営業部からマネージャーとして送り込まれた敏腕ソムリエです。以前は卸部門でトップの営業成績を収めていましたが、ある事情により左遷されます。

動画配信では物腰柔らかい印象でしたが、実像は非常に高圧的な合理主義者。店を存続させるために、古参スタッフの反対を押し切ってSNS活用などの改革を進めます。

俊介の作るまかない料理を1口食べただけでその才能と未熟さを見抜く鋭さを持ちます。酒には弱く、酔うと無防備な一面を見せることもあり俊介を動揺させます。

橘シェフ

橘シェフはル・ルレの厨房を長年率いてきた経験豊富なベテラン料理人です。確かな技術で店を支えてきた一方、変化を嫌う保守的な一面も持ち合わせています。

日野からは「工夫のかけらも見えない」と公然と批判された人物です。店が存続の危機にある中でも、伝統的なスタイルを維持しようと努めています。

日野の提案する新しい試みに対して当初は複雑な感情を抱きながらも厳しい状況下で働く俊介たちスタッフを静かに見守る存在です。

山崎

山崎はレストランのレセプションを担当している女性スタッフです。俊介とは同期の間柄であり、店内の人間関係や噂話に精通しています。日野が配属された初日に彼の経歴や噂を俊介に詳しく教える役割も果たした人物です。

日野が着手したホールスタッフの再教育やSNSでの宣伝活動にも協力的で店の雰囲気が変わりつつあることを若手スタッフとして敏感に察知します。俊介の良き理解者であり、仕事の合間には気さくに言葉を交わす関係です。

真壁修

真壁修は会員制バー「ルリエ」を経営しているマスターで、日野とは旧知の仲です。かつてはフランスで修行を積んだ料理人でしたが、現在は酒を優先してバーを営んでいます。

日野が俊介の才能を伸ばすために連れてきた場所で2人を温かく迎え入れた人物です。日野が左遷された本当の理由を知っており、俊介にその過去を明かします。

料理に対する深い見識を持ち、俊介の味覚の鋭さをいち早く見抜いた存在です。酔い潰れた日野を介抱するなど、私生活でも日野を支える数少ない友人でもあります。

白井

白井はル・ルレの厨房で橘シェフを支えている副料理長です。見習いである俊介にとっては技術を学ぶべき身近な先輩料理人にあたり、日野との関係に戸惑う俊介に対し、ある時に意外な誘いを持ちかけた人物です。

厨房内の規律を保ちながら日野やシェフの間で立ち回り、スタッフの不満や戸惑いも身近で感じ取っている1人です。

見どころ

憧れと現実が交錯する関係性

俊介にとって日野は、画面越しに眺めるだけの遠い存在——特別な推しでした。しかし実際に目の前に現れた日野は、動画のイメージとは正反対の傲慢な上司です。このギャップから生じる戸惑いや反発が本作の物語を力強く牽引しています。

高圧的な態度に憤りを感じながらも日野の仕事への誇りに俊介は惹かれ、また日野も俊介のひたむきな努力と才能を認めることで少しずつ態度を軟化させていきます。2人の距離が徐々に縮まっていく展開は胸を熱くさせる要素です。

本格的な美食とワインの描写

本作ではフレンチレストランを舞台に料理とワインの魅力が詳細に描かれています。特にソムリエである日野が料理に最適な1杯を提案するペアリングの場面は良く、パンチェッタのリゾットとフランス産ワインが織りなすマリアージュは食欲をそそります。

ワインの1口が料理の香りを引き立てる瞬間や相互作用による変化の描写も克明で、俊介が料理人として新しい味覚に目覚めていく様子には確かな説得力があり、専門的な知識が物語の中に自然に組み込まれているため、知的好奇心も満たされます。

崖っぷちレストランの再建

閉店の危機に瀕した老舗店を新任マネージャーが立て直すビジネス要素も本作の魅力です。日野はSNSの活用やホールスタッフの意識改革を冷徹かつ迅速に進めていき、古い伝統に固執するベテラン勢との衝突は避けては通れない組織の課題です。

クリスマス期間を満席にするという厳しい目標に向かいスタッフが結束していきます。俊介も1人の料理人として店を支えるために自らの殻を破ろうと試み、恋の行方だけでなくプロフェッショナルたちが誇りをかけて戦う姿も大きな見どころです。