漫画『銅羅衛門』はどこで読める?
『銅羅衛門』は1981年12月25日に奇想天外社から刊行された『マンガ奇想天外臨時増刊号 パロディ・マンガ大全集』に掲載された短編作品です。一度も単行本化や電子書籍化がされていないため、読むためには掲載誌の現物を中古市場で入手する必要があります。
例えばメルカリは、個人間取引のため在庫の回転が早く、出品が比較的頻繁に見られる点が強みです。実物の写真を確認しながら価格交渉や送料込みの出品を見つけられる可能性もあり、状態と価格を吟味して購入しやすい環境です。
ヤフオクなどのネットオークションも有効な手段であり、『銅羅衛門』が出品されています。入札形式で価格が上下しますが、稀に帯付きや保存状態の良いものが見つかることもあるため、高額でも読みたい場合は定期的に出品状況を確認すると良いでしょう。
再録が難しい理由
『銅羅衛門』は1981年発行の雑誌の臨時増刊号という特殊な位置づけであり、初版の発行部数も限られていました。そのため、物理的な書籍を探す以外にこの幻の作品を読む手段がないのが現状です。
本作の復刊や再録が難しい主な理由としては、内容が過激であることや国民的キャラクター『ドラえもん』をベースにしたパロディ作品という性質が挙げられます。現代の倫理観や出版事情を考慮すると、このような過激なパロディ作品が再び公式に世に出る可能性はありません。
配信状況
あらすじ
物語はいじめられっ子の少年のぶたが、日頃の恨みを込めていじめっ子のシャイアンの似顔絵に鉛筆を突き刺している場面から始まります,。その様子を見た銅羅衛門は、のぶたの貯金箱を手に未来へ行き、代わりにミニ地獄マシンという恐ろしい道具を持ち帰ってきました。
この機械は憎い相手の写真を入れると、その人物が豆粒ほどの大きさになってマシン内の地獄のジオラマに出現し、使用者があらゆる拷問を加えられるというものです。のぶたと銅羅衛門はマシンを使って復讐を開始し、シャイアンを血の池に沈めて槍で刺し、彼の体をノコギリで切断します。
さらにソネ夫も槍で串刺しにした挙句、石うすで粉々にされるという本家『ドラえもん』では考えられない残虐な仕返しを楽しみます。
それから一ヶ月後、のぶたがローンの支払いに必要だったお小遣いを誤って水洗トイレに流してしまい、事態は急変します。ミニ地獄マシンはのぶたのお小遣いを担保にして、地獄界の通信販売でローン購入した商品だったからです。
結果、地獄から鬼の取り立て人が現れ、ローンが払えなくなった罰として銅羅衛門とのぶたの二人は強制的に地獄送りとなってしまいます。最終的に彼らは、かつて自分たちが他人に対して行っていたように、火あぶりや釜茹での責め苦を受けるという皮肉に満ちた結末を迎えるのでした。
登場人物
銅羅衛門
主人公である銅羅衛門は、国民的キャラクターであるドラえもんをモデルにしたパロディキャラクターです。外見は似ていますが、その性格や行動は原作とは正反対で、のぶたの復讐心を煽る冷淡で不気味な存在として描かれています。
銅羅衛門の提供する「ミニ地獄マシン」は救済の道具ではなく、ターゲットを拷問するための恐ろしい加虐装置です。銅羅衛門はのぶたのお小遣いをあてにして地獄の通販でこのマシンをローン購入しており、その軽率な行動が物語の破滅を招きます。
最後は、のぶたとともにローン不履行の罰として地獄行きとなり、自ら火あぶりや釜茹でにされる末路を辿ります。
のぶた
のぶたは原作ののび太をモデルとする眼鏡の少年で、日常的にいじめられている被害者ですが、内面に復讐心を秘めています。銅羅衛門の「ミニ地獄マシン」を手に入れたことで、彼の中に潜んでいた攻撃性が解放され、自ら加害者として凄惨な復讐を実行します。
のぶたは復讐の快感に陶酔しますが、その一方で、お小遣いをうっかり水洗トイレに流してしまうという、本家さながらのドジな一面も持ち合わせています。このドジが結果的にローンの支払いを不可能にし、銅羅衛門とともに地獄へ堕ちる結末を引き起こします。
シャイアン
シャイアンは原作のジャイアンに相当するキャラクターで、のぶたをいじめていたガキ大将です。本作では悪意の象徴としてデフォルメされ、のぶたによる復讐の最初の標的となります。
彼は「ミニ地獄マシン」の中で血の池に沈められ槍で刺され、針の山を登らされた後、ノコギリで一刀両断にされるという残虐な仕打ちを受けます。
シャイアンの無残な末路は、これまでのいじめ行為がそのまま自分に返ってくるという作品のテーマである因果応報を体現するものです。その描写は極端にデフォルメされながらも、読者に強烈なインパクトを残します。
ソネ夫
ソネ夫は原作のスネ夫をモデルとし、シャイアンの傍らでのぶたをいじめていたずる賢く陰険なキャラクターです。彼もまた、のぶたが「ミニ地獄マシン」を使って行う残酷な仕返しの対象。ソネ夫は地獄マシンの中で槍に串刺しにされた後、最終的に石うすで粉々に押し潰されてしまいます。
見どころ
常識を覆す原作破壊の衝撃
『銅羅衛門』最大の魅力は国民的アニメ『ドラえもん』の持つ優しく温かい世界観を、日野日出志先生が冷酷でグロテスクな世界へと大胆に歪めている点です。夢と希望の象徴であった未来の秘密道具が、恐怖と絶望をもたらす「ミニ地獄マシン」へと変貌している点が、読者に強烈な衝撃を与えます。
登場人物たちの明るいイメージが排除され、善悪の境界が曖昧なまま物語が進行する構成は、パロディの枠を越えた創造的破壊と呼べます。原作の知識が深い読者ほど、このギャップは衝撃的に響き、本作が「裏ドラえもん」的世界として伝説化している理由の一つです。
グロテスクな復讐劇
のぶたが「ミニ地獄マシン」を使い、いじめっ子たちに対して行う凄惨な復讐劇は、本作における生理的恐怖の中心です。マシン内で繰り広げられる拷問シーンでは、シャイアンがノコギリで切断されたり、ソネ夫が石うすで圧殺されたりする描写が容赦なく描かれます。
これらの描写は過度なリアリズムに依らず、日野先生独自のタッチによる異形の幻想として表現されているのが特徴です。一見コミカルなキャラクターデザインと、繰り広げられる血の池や針山といった残虐な行為の落差がかえって残虐性を強調し、読者に強烈なインパクトを残します。
因果応報のブラックな結末
復讐に手を染めたのぶたと銅羅衛門が、最終的に地獄へ堕ちる結末は、本作のブラックユーモアとテーマ性を際立たせています。復讐の道具である「ミニ地獄マシン」が、のぶたのお小遣いを頼りにした地獄の通販のローン商品だった設定が、物語に皮肉なオチをもたらします。
ローンが払えなかった二人は地獄の鬼に捕らえられ、火あぶりや釜茹での責め苦を受けます。この結末は、復讐の快楽に溺れた者の傲慢の末路であり、悪行には必ず報いが来る因果応報の重いテーマを、ブラックコメディとして表現しています。
作者
『銅羅衛門』の作者は、怪奇や叙情的な世界を独特のタッチで描く、ホラー漫画界の重鎮である日野日出志先生です。日野先生の作品は不条理や狂気、人間の内面に潜む闇を寓話的に描き出し、悪夢のような読後感を残す「日野ワールド」として知られています。
彼の画風は荒々しくも哲学的で、人間の業や孤独、死への恐怖といった普遍的なテーマが作品の根底にあります。日野先生の作品は日本国内だけでなく、海外でも翻訳され、カルト的な人気を誇るなど高く評価されています。
『銅羅衛門』は国民的キャラクターをベースにしたパロディ作品であり、日野先生のキャリアにおいては異色作に当たりますが、彼の得意とする恐怖表現や風刺は見事に息づいています。
日野先生自身は、ホラーというジャンルが「本当はあまり得意ではない」と語ったこともあり、恐怖を描く目的は人間の弱さや孤独を描きたいからだとしています。
評判
良い評判
『銅羅衛門』は、その強烈なインパクトにより「知る人ぞ知る隠れ名作」として高い評価を得ており、読者には忘れられない読書体験を残しています。
可愛らしいキャラクター造形と、凄惨な描写や異様な空気感のギャップが「一度見たら頭から離れない」「トラウマ級」といった強烈な感想を呼び起こしています。
単なる悪趣味なパロディとしてではなく、完成度の高いホラー短編として評価されており、物語の随所に仕込まれた皮肉や社会批評性すら感じるといった意見も見受けられます。
特に復讐の末に主人公たち自身が地獄へ堕ちる皮肉な結末は、「突き放すようでいて鋭い」「救いがないのに妙に納得させられる」と、読者の心に深い余韻を残しているようです。
悪い評判
『銅羅衛門』は、その過激な内容と特異性から賛否両論を呼ぶ問題作という側面も持ち合わせています。ホラーやグロテスクな描写に慣れていない読者からは、「気分が悪くなった」「読む人を選ぶ」といった批判的な感想が上がっています。
日野日出志作品に耐性があるかどうかが、本作の印象を大きく左右すると言っても過言ではありません。過激な描写に対する耐性のない人からは「作品そのものよりも、自分の中にある恐怖や不快感を刺激されるのが辛かった」という声も上がっています。
過激な内容と入手困難な希少性が相まって、伝説的な怪作としてカルト的な人気を誇り続けていますが、気軽には勧められない覚悟して読むべき一冊です。

