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作品紹介
あらすじ
『「壇蜜」』は誰もが知る超有名タレントと知る人ぞ知るマイナーサブカル漫画家という、本来交わるはずのない二人が、なぜ夫婦となったのかを描いた大型ノンフィクション漫画です。2019年に日本中を震撼させた結婚劇から遡ること2年、二人は交際を開始しました。
本作は出会いから結婚生活に至るまでの日々が、著者である清野とおる先生の視点を通して、脚色一切なしの実録として赤裸々に綴られています。清野先生が人間関係において発生する怪事件や哀歓を描き尽くしてきた名匠として夫婦をテーマに挑んだ結果、とんでもないことになった作品です。
物語では交際相手の家族といかなる情緒で交流したのか、また日常生活がどこまでスリリングなのかといった外野の人間が決して立ち入ることのできない真実が描かれます。
作者
作者の清野とおる先生は、東京都北区赤羽在住の漫画家です。過去の主な作品には、愛すべきクセの強い住人たちが多数登場する『東京都北区赤羽』をはじめ、『東京怪奇酒』『その「おこだわり」、俺にもくれよ!!』など、自身の体験を基にした実録エッセイ漫画があります。
清野先生の作風は街中で出会った一癖も二癖もある人々や身近で起きる不思議な出来事を、独特の絵のタッチと鋭い観察眼で面白おかしく描く点が特徴です。
2019年に壇蜜氏と結婚した清野先生は、新連載『「壇蜜」』の発表に際し、まだ本調子ではない壇蜜氏に代わって本人の凄さ、面白さ、ヤヴァさ等をお伝えできればと意気込みを語っています。
『「壇蜜」』を漫画家生活の全てをかけた渾身の集大成とも位置づけており、これまでに培った表現技法を余すことなく使用しています。その結果、本作はエンターテイメントとして非常に完成度が高い作品として、メジャー漫画家への昇華を果たしました。
登場人物
壇蜜
壇蜜は本作の主人公で、清野とおる先生の妻です。世間が持つ妖艶で知的なイメージを軽々と超えてくる規格外の奇人として清野先生の鋭い観察眼を通して描かれています。
彼女は散弾銃の免許の教習を受けたり、遺体衛生保全士の資格を持っていたりするなど、多才さと底知れぬ深さを持っています。自宅ではスフィンクスという種類の雌猫やヘビ2匹、モモジタトカゲ、ナマケモノなど、多種多様な生き物を飼育しており、世話をする様子も本作で描かれています。
夫の清野先生は彼女の独特な感性や奇妙な言動に戸惑いながらもその全てを観察対象として、愛情を込めて描写しています。結婚前の本名は齋藤支靜加で、本作を通じて“タレント・壇蜜”ではなく、“妻・清野支靜加”という一人の人間の輪郭が浮かび上がってきます。
清野とおる
清野とおる先生は本作の作者であり、壇蜜氏の夫です。東京都北区赤羽在住の漫画家で、『東京都北区赤羽』や『東京怪奇酒』といった実録エッセイ漫画で知られています。
作風は日常に潜む奇妙な出来事や人々のユニークな一面を、独特の絵のタッチと鋭い観察眼で描き出します。彼は国民的タレントである妻の壇蜜氏をまるで一人赤羽という存在のように捉え、その奇妙な生態を冷静かつ愛情を込めて描写しています。
壇蜜氏からの突然の結婚の申し出を当初は恐怖体験と感じていましたが、彼女の不思議な引力に抗うことなく、いつの間にか交際・結婚へと至ったそうです。また、本作を漫画家生活の集大成とし、病気療養中の妻に代わって彼女の凄さ、面白さ、ヤヴァさを伝えたい想いで執筆しています。
三木大雲和尚
三木大雲和尚は、単行本第1巻に収録されているエピソードに登場する人物です。本作では壇蜜氏の自宅で発生する存在しないはずの上階からの足音や耳元で聞こえる「わたし えりちゃん」という声など、奇妙な超常現象が描かれています。
怪談で知られる三木大雲氏は、これらの心霊現象の検証や壇蜜宅の訪問で作品に登場しました。彼の登場は単行本の限定企画の一つで、夫婦の初対談などと共に収録されています。
三木大雲氏の存在は本作におけるホラー要素の面白さを高め、読者から大きな反響を呼びました。清野とおる先生の描く奇妙な世界観と、怪談の専門家である三木大雲氏の組み合わせは、まさに本作ならではの魅力です。
見どころ
初対面からの逆プロポーズ
二人の出会いは2017年2月のテレビ番組櫻井・有吉 THE夜会の赤羽ロケでした。ロケ中、たまたま二人きりになった休憩時間に壇蜜氏から清野先生に対して「じゃあ、わたしと結婚しましょうよ」と唐突なプロポーズが放たれます。
会ったその日にまさかの逆プロポーズされる出来事を、清野先生は当初恐怖体験以外の何者でもないと表現しています。この衝撃的なエピソードは、結婚当時の報道における定説を覆すものでした。
以前は、清野先生が三軒茶屋の西友の前でプロポーズしたと伝えられていましたが、漫画でその真相が訂正されています。初対面で結婚を申し出た壇蜜氏は、ロケの終わりにしっかりと清野先生に連絡先を渡し、その後から二人の不思議な交流が始まったのです。
奇妙奇天烈な日常と怪異
本作の大きな見どころは、壇蜜氏が引き起こす奇妙奇天烈な日常と彼女の周囲で起こる怪異の記録です。清野先生は、壇蜜氏のことを今まで出会った中でも指折りの奇人と形容しており、彼女の言動は非常にエキセントリックで魅力的。
たとえば、腐乱死体の匂いを再現できたり散弾銃の免許を取りにいったり、蛇など様々な生き物を飼育していたりする規格外のエピソードが描かれています。さらにこれらだけに留まらず、週末婚で壇蜜宅へ通う清野先生は、彼女の自宅で数々の怪奇現象を目撃したのでした。
存在しないはずの上階から聞こえる足音、部屋にいるときに耳元で聞こえる奇妙な声など、随所にホラー的な要素が散りばめられています。しかし、壇蜜氏は心霊現象を怖いとも気味悪いとも思わず、日常として受け入れている点が、清野とおる先生の作品らしいユーモアに昇華されています。
潜入取材による夫婦愛
本作は清野とおる先生が妻である壇蜜氏を唯一無二の潜入取材記録として描く特異な構成が特徴です。清野先生は壇蜜氏を自身の代表作に登場する人々に重ね、一人赤羽と表現して彼女の私生活や奇妙な超常現象を冷静かつ淡々と見つめ、人間的な輪郭を描き出しています。
一般的なラブストーリーに見られるような甘い言葉やラブラブなシーンはほとんどなく、代わりに執拗なまでの観察眼が貫かれており、言葉で愛していると言うよりも「あなたのことをちゃんと見ているよ」と最高純度の愛情表現であると解釈することができます。
清野先生の視線は、妻の奇妙な部分や彼女を取り巻く人々の反応まで含めて面白がり、それを愛おしそうに作品に昇華しています。互いを侮らず一人の面白い人間として尊重し続ける、一般的な夫婦像とは異なる誠実で深い愛の形が本作から滲み出ているのです。

感想・評価