引退したおっさん冒険者 どこで読める?

引退したおっさん冒険者 どこで読める?

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作品紹介(ネタバレあり)

あらすじ

長きにわたって世界に厄災を振りまいてきた黒き魔竜が封印されてから幾年月、世界は日常を取り戻していました。交易都市ハンザルクのギルド【銀月の狐】に所属する中年B級冒険者ドノバンは、重い武器を持つのがきついとぼやき、引退勧告を素直に受け入れます。

しかし、引退直後に魔殺熊とのトラブルが起き、彼の常軌を逸した行動から、周囲に「ドノバンは黒き魔竜とやりあった伝説級の猛者ではないか」と疑惑が浮上。

隠された実力と評判を買われ、ドノバンは崩壊寸前の老舗ギルド「赤鉄の龍」のギルドマスターとして再雇用されますが、そのギルドは借金まみれで開店休業状態でした。

ドノバンは借金取りの金貸しボンボスに追い込まれて、いつの間にか莫大な借金の連帯保証人にさせられてしまい、借金の肩代わりとしてかつて戦いで手にした黒き魔竜の鱗を差し出します。

ところがこの呪われた鱗が騒動を招き、ギルドのある街に災害級の翼竜が襲来する事態となります。望まぬうちにギルドの再建と街の危機を背負うことになったドノバンは、新たな戦いの渦中へと導かれていくのでした。

作者

kimimaro

高島正嗣

アンブル編集部

登場人物

ドノバン

ドノバンは交易都市ハンザルクのギルド【銀月の狐】に所属していた最古参のB級冒険者です。引退間近の冴えない中年男性で、「重い武器を持つのがきつい」とぼやき、簡単な輸送の仕事ばかりをこなしています。

その実態は、かつて大災害級のモンスターである黒き魔竜と死闘を繰り広げた伝説級の英雄です。ドノバンの実力はS級冒険者と肩を並べるほどとされていますが、過去に手柄を横取りされた因縁から実力を隠して生きています。

彼は引退を決意した矢先に、老舗ギルド「赤鉄の龍」のギルドマスターとして再雇用され、本人は気楽に生きたいと思っていますが、周囲からは「実は伝説級では」と疑われ始めています。

ギルドマスターの職を引き受けた背景には、彼が追い求めている封印された黒き魔竜の残滓に関する情報が、赴任先の城塞都市ニーベルグにあるらしいという個人的な目的も関係しています。

シアーネ

シアーネはドノバンが再雇用された老舗ギルド「赤鉄の龍」の受付嬢で、ギルドマスター代理を務める責任感の強い女性です。借金まみれで冒険者の大半が去ってしまい、崩壊寸前のギルドをたった一人で支えようと奮闘しています。

かつて彼女の一族が代々ギルドマスターを務めていましたが、父親の代で経営難に陥ってしまい、家族同然の仲間がいたものの今は疎遠である状況に心を痛めています。

ドノバンがギルドマスターに就任した後、彼女は彼の穏やかな采配や行動に対し、早い段階から信頼を寄せます。物語の序盤ではギルドの崩壊を防ぐため、翼竜の山へ冒険者を差し向ける許可を出してしまい、それが翼竜襲来の原因の一つとなって苦悩します。

なお、彼女の両親の過去がギルド「赤鉄の龍」が衰退した真相と深く関わっていることが示唆されており、物語の鍵を握る人物の一人です。

アルクス

アルクスは老舗ギルド「赤鉄の龍」の元エース冒険者で、キラーベアの群れを一人で討伐できるほどの高い実力を持っている人物です。シアーネの義兄にあたり、血の繋がりはないものの、かつては家族同然に絆を深めていました。

現在はかつての正義感や優しさを失い、冷徹な態度を取るようになってギルドにも反発する姿勢を見せています。ドノバンが新たなギルドマスターに就任した際も、ドノバンに対し不満を抱き、実力を見極めようと挑発的な行動をとりました。

物語中盤、ドノバンが不在の街に災害級の翼竜「赤錆」が降臨した際には、元精鋭たちとともに街を守るために奮戦し、赤錆に渾身の一撃を放ちます。

ヘイブン

ヘイブンは、ドノバンが以前所属していた交易都市ハンザルクのギルド【銀月の狐】に所属するB級冒険者です。若手ながら実力者であり、大剣を扱う凄腕の冒険者で通称・森殺しのヘイブンと呼ばれています。

物語の冒頭では、重い武器を持つのがきついとぼやくドノバンをロートルと見下し、引退するようやんわりと勧めました。ヘイブンはドノバンに引退を勧告するほど、彼のことを実力のない年配冒険者だと認識しています。

しかし、彼自身が仕留めてギルドに持ち込んでいたはずの魔殺熊が暴れ出した際、ドノバンが事務用のペン一本で魔物を瞬殺する場面を目撃。圧倒的な実力差を目の当たりにしたことで、ヘイブンはドノバンに対する認識を一気に改めます。

ヘイブンは物語の序盤において、ドノバンの隠された真の力を理解できる役割を担うキャラクターです。彼の存在を通してドノバンがS級冒険者にも匹敵する桁違いの能力を秘めていることが分かります。

見どころ

冴えない中年と英雄のギャップ

『引退したおっさん冒険者、再雇用で最強ギルドマスターになってしまう』最大の魅力は、主人公ドノバンが持つ冴えない中年男性と伝説の英雄の二面性にあります。

普段のドノバンは引退を勧められるほどにやる気がなく、「年だからきつい」とぼやくばかりのロートル冒険者に見えますが、ひとたび危機が訪れると彼の眼光は鋭く変わり、他の冒険者が束になっても敵わない強敵をいとも簡単に退けます。

特に凶悪な魔物である魔殺熊を事務用のペン一本で瞬殺してしまう常識外れの活躍は、最高の爽快感とカタルシスをもたらしてくれるのです。ドノバンのこのギャップは、物語の強力な推進力となっており、多くの読者から絶賛を集める理由でもあります。

また、ドノバンが示す卓越した能力や経験は、若者が主人公の作品とは異なるセカンドキャリアという成熟したテーマを内包しています。

彼の不器用ながらも実直な活躍は、年齢に関わらず経験豊富な大人が新たな役割を見出すことの価値を示しています。見た目では判断できない真の実力が輝きを取り戻す姿が、読者の心を強く惹きつけている点が魅力です。

危機的なギルドの再建

ドノバンが再雇用された老舗ギルド「赤鉄の龍」は借金、人材不足、依頼の激減といった三重苦で崩壊寸前の危機に瀕していました。

さらにギルド内部では若き実力者アルクスをはじめとするメンバー間の不和があり、外部では領主との関係も著しく悪化している内憂外患の状態です。本作は剣と魔法の王道ファンタジーにギルドの再建という経営的な側面が加わることで、物語に現実感が生まれています。

受付嬢シアーネの両親の過去がギルド衰退の根源に関わっている謎も存在し、ギルドの立て直しは過去の清算にも繋がる重厚なテーマとなっているため、単なる戦闘を楽しむだけでなく、大人の主人公が社会的な困難に立ち向かうドラマとして楽しめる点が見どころです。

黒き魔竜と過去の因縁

主人公ドノバンと、かつて世界に大厄災をもたらした伝説の存在である黒き魔竜との間には深い因縁があります。黒き魔竜はドノバンを含む四人の勇敢な冒険者によって封印されましたが、呪いの影響は「残滓」や「鱗」といった形で世界各地に残っている状態です。

ドノバンの身体には黒竜から受けた呪いの傷跡が刻まれており、彼はその呪いを引きずっていますが、彼の強大な力を物語る証拠でもあります。

また、彼が新たなギルドマスターとなった城塞都市ニーベルグは、封印された黒き魔竜の「残滓」の情報がある場所でもあり、物語が進むにつれてドノバンが個人的に探している情報や過去の因縁が複雑に絡み合い、謎が解き明かされていく過程は大きな魅力です。

翼竜の襲来事件は領主が狙う「竜魂花」を巡る陰謀や、黒竜の残滓の動きと複雑に絡み合い、物語に重厚なミステリー要素を与えています。ゆえに王道ファンタジーの中にミステリー要素を求める読者には、特に心に響く作品です。